16年前に立ち上げた、NPO石巻広域ソーシャルスキルトレーニングの会アドベンチャークラブ。私は当時、大学院卒業したばかりで支援学校の講師をしていた。活動のきっかけは地域の学校の保護者から聞こえてきた悩みだった。当時はまだ放課後デイサービスなどはなく、発達障害のある子どもたちへの認知度も低かった。彼らは休みの日に公園で遊びトラブルになったり、休みの日に遊ぶ友人がいないなどの切実な悩みを抱えていた。

まだ当時は軽度発達障害、という名前だった。知的な障害はないが、コミュニケーションや行動にやや特性があるため集団活動には参加しにくいと言われていた子どもたち。

一方で私自身は知的障害支援学校の講師だったため、学校を拠点としながら、先生たちや地域の大学生たちと一緒に、障害があろうがなかろうが、困ってたりニーズがあったりはみんな、同じ!と、毎月1回土曜日に外出やら野外活動やらいろんな活動を楽しんできた。

毎年、増えたり減ったりしながらかなりおもしろいメンバーが集まって、宿泊も、遠出も、ヒヤリとする出来事も、泣けることも、ぎゅうぎゅうと味わった。

いまもそして、16人のメンバーが青年となって、ついには代表がメンバーから選ばれた。

そんな彼らに、保護者も含めてそういえば選挙ってどう参加してるの?と聞いてみた。

①毎回投票する

②時々投票する

③投票したことがない

さあ、いちばん多かったのは?

実はアドベンチャークラブメンバーは、①と②が圧倒的多数でした。参加したことがない方が少数派!こりゃ嬉しい!

理由はシンプル。

権利だから行く!

こういう人もいると知ることは地域の選挙管理委員会にもためになる!

選挙は必ず参加すると本人が決めてる!

選挙が好き!

とはいえ、もちろんこの高い投票率は、これまで地域に出かけ続けたり、家族や周りとの関係性というものが支えていることかもしれない。やはり初めて行ったときには、緊張もしたし、戸惑ったし、代筆どころか選べなかったかもしれない、と家族は話す。(このあたりの仕組みについてもたくさん話題はありそうだ)

さあ、ということは、やはり次は自分で選ぶことをできるかぎり応援したい。正直なところ、政党の公約は彼らには分かりにくい表現だったりする。とくに知的障害や学習障害がある場合は分かりにくい言葉は苦手でもある。彼らの想いを実現できる政党は?そうか、そういう選び方もあるんだな。

大事な1票だからこそ、分からないから、選ばない、という方もいました。責任がある1票だと感じていらっしゃるからこその発言。

しかし、「分からないから参加しない」は、もはや合理的配慮に欠くことになり、障害者差別にあたること。すべての政党は分かりやすく、すべての国民が理解できるように説明すべきなのだと思う。

メディアが、分かりやすいフローチャートやマッチングサイトなども作ってはいるが、小さな政党はひとくくりにされたり、なぜか報道されなかったりと、まったく平等に機会が与えられていない。

障害があろうがなかろうが、すべての情報に格差なく触れられ、考えることのできる余地と、政治について語れる素地を作ること、これが何より重要なのではないだろうか。

それからもうひとつ、障害があろうがなかろうが、おとなたちが日常的に政治を語る場や機会がない。学校でさえ、そうだ。

もし日常的に、話ができていたら、選挙のときだけ盛り上がるようなことではなく日々の中で、政治への関心を持ち続け、選ぶのは当然の日常になるだろう。

実際に、フィンランドではすべての政党が学校に説明に来るという。小さなときから、政治が身近にあるということは大事だ。

さて、そんなわけで7/15、アドベンチャークラブのイベントとして、選挙を語るイベントを急遽、開催。選挙をしたことのある先輩たちのエピソード、ちょっとした練習、そして選ぶための情報提供。

どんなことになるかは未知だが、とにかく彼らと語れる場を作りたい。

もし関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひお越しください。一緒に語りましょう!

みんなにシェアしてね!

櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

「違いは魅力」をテーマに、子どもから大人まで特性を活かしてのびのびと発達するための、アセスメントとコーディネートを行う。
 東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,発達障害の子どもたちと出会い、宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。2003年に「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職。生涯発達支援の重要性に気づき「生涯発達支援塾TANE」を主宰。書道塾taneは「誰でも調子に乗れる書道」をモットーに石巻、仙台、各地で移動開催中。TANE相談室も定期開催中。