フリースペースTANEの中でのおだやかな時間

昨日、母親大会というところで「助言者」ということでお話をする機会をいただいた。テーマは、「障がい者が安心して暮らせる社会」で、「就労のことや引きこもりのことや、卒業後のことなど・・・」ということだったので、今まで出会ってきた青年たちとのいろいろを考えながらお話をしてきた。

まとめながら、ふと思った。
私たち自身が「安心して暮らせる社会」ってどんなものかイメージできているんだろうか。

収入があればいいの?
暮らせる家があればいいの?
友達がいればいいの?
相談ができればいいの?
社会保障が整っていること?
医療の充実?
心配事がないということ??

考えれば考えるほど、「安心して暮らせる」のイメージが私自身が湧かない。アドベンチャークラブなるものを立ち上げてからは、前の日には安心して眠れる事はないのでほぼ、「不安心」だ。フリーなどという立場になってからは、収入が不安定だし、住むところも震災以前からうちは代々移住系民族みたいな暮らしをしていて「不安定」がそもそも前提ではないか。最近では、名誉ある称号として「住所不定夢職」(無じゃなくて、夢。)という言葉までいただいてしまったし。

みなさんが口を揃えて「将来が心配だ」とおっしゃる。お孫さんのこと、お子さんのこと。障害があるということで「心配」になってしまう社会は、確かに「安心」ではない。しかし一方で、どのようなものが揃っていれば人間は安心なんだろうか。

もしかしたら明日、自分が不慮の事故で何か大きな障害を持ってしまうかもしれません、明日震災で住む家がなくなってしまうかもしれません、どうしたらいいでしょうか、という相談は、実は全く来ない。

それどころか、妊婦さんの段階での相談というものを私はほとんど受けたことがない。例えば、「子どもを授かったのですが、この子がもし発達障害だったらどうしたらいいでしょうか」という相談は、「子どもが発達障害だったんです、どうしたらいいでしょうか」という相談に比べて少ない。まして、「子どもが通常に発達しているんですけど、不安です」という相談はあまりない。

これは、人間がやはり目の前にある「もの」に対して、ある程度、経験や予測がつく範囲内で「不安」になっているということなのかもしれない。つまり、全く知らないものに対しては予想もしないし、不安にもならないのかもしれない。そして私たちは、経験したものや見聞きしたものの範囲内でしか、悩まないのかもしれない。

と、いうことはやはり、たくさん経験し、たくさん知っているということは、不安をなくすことにつながるのだと思う。耳から入る情報も、目から入る情報も、より「良い」ものを入れること。それは自分を「ポジティブに!」という脅迫ではない。過剰に不安を煽る報道、過剰に心配させる風潮、それ自体と決別する勇気を持つ、ということかもしれない。(私は震災後からテレビを一切見なくなり、人生が好転しているとさえ思う)

障害の有無にかかわらず、「役割を持つ」ことは嬉しいのだし、その時の笑顔は美しいのだ。私は今、耕人館でふたりの青年とともに月2、3回の少ない時間だが一緒に掃除や自分を知るためのワークをして過ごしている。

彼らはなかなか社会とつながりにくく、それぞれ抱えているものがあるが、「家族以外に本人が自由にしていられる場所」というものの必要性を感じている。長くつまづきを抱えてきた家族の場合、そこではむしろ、ここに居られるのだ、という安心感のようなものを家族が感じ、その後に本人がじわりと馴染んでいくという順番のような気がする。

一方で、まだ幼い子どもたちの場合は、「ここがいい」「ここは安心」ということを直感的に感じ、安心した子どもを見てから、家族が安心していく、という順番が多いようである。

今日は、ふたりの青年(ともに交わることは少ないタイプだ)が、合間に何か会話していたり、一緒にカラオケに行くというプランについて、合意していたりして、面白い。会話って弾まなくてもいいしなあ。なんか、穏やかでいいなあ。あれ、なんか安心してるなあ。という実におだやかな月曜日の一瞬。

永遠に愛を誓わなくていいし、永遠に安心を保障しなくても、一瞬の幸せとか、そういうものの積み重ねができていくことが日常なのではないかと思う。あと、失敗してもいい、立ち止まってもいい、っていうことも。

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櫻井育子(さくらいいくこ)。宮城県石巻市出身。特別支援教育士。宮城教育大学大学院障害児教育専攻修了後、小学校、特別支援学校の教諭を経験後、発達支援の現場が生涯を通した支援が不足していることに気付き、福祉と教育と地域を横断する人材を育てるためのコーディネーターを行なっている。得意分野は遊ぶことと書道。NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ代表。

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