「トリセツ」の複雑なタイプ。

「トリセツ」と言う言葉が流行った。「血液型」や「星座」や「生年月日」や「同胞の数と順番(何人兄弟の何番めとか)」で性格を類型化して、「ああ、B型っぽい」とか、「やっぱり一人っ子だと思った〜」みたいな会話って、いつの時代でも共通で盛り上がっている気がする。

ホリエモンが、「多動力」という本を出してくれたおかげで、ADHDの「多動性」については肯定的な捉えもあるし、もちろん「発達障害」だって、「特異な才能の持ち主」(ギフテッド)」という人々のことをクローズアップされることも増え、かなり多様な捉え方をされるようになっている。一方で、そういう特別な存在ではないのでイメージを作らないで欲しいという方々の声もある。いずれにしても、「わたし」と「あなた」の関係を作るだけの話であり、一括りにして理解しようということに違和感がある。

発達障害という言葉は知っていても、それが一体どういう状態なのかを理解することが難しい。だから私たちは、自分ごととして理解できなかったり、反対に「みんな色々違うんだから」と簡単に「同じ」扱いをしてしまう。これほどまでに理解されにくいというのは、もはや人間の性質に、「共感」という機能が存在してはいるが、やはり感覚は自分自身だけのものであり、完全に分かり合えることがない存在であることの証なのではないか、と思う。

そこで、特にこうした「特性理解」というものは、共感なんかではなく、客観的に理解していただくしかないのではないかと思っているのだが、それはそれで検査とは何か、何のためにあるのかを理解していないと、難しい。

こと、教育現場での理解が難しい。悲しくなるほどの相談を耳にしているので私の情報が偏っていることもあるのだが、ある保護者から昨年聞いたもので一番驚いたのは、「学校の先生に検査してもらったら、偏りがあると言われて病院を勧められた。困っていることは確かなんだから相談してきてと言われたら薬物治療になった。同じクラスに何人もいる。クラスの3分の1が通級指導になっている。」というものであった。

さて、この「検査」であるが、一般的に単純に知的障害か否かを知るには「田中ビネー」という検査がある。IQを測るものである。しかし、発達障害は知的障害を伴わないこともあるため、一般的にはさらに詳しく特性を調べる。それがWISC(現在はⅣ)という検査である。

ざっくり説明すると、実は「知能」ってものはいろいろある。この検査では、
・結晶性知能(過去の学習から得た知識、習慣、言語を操る能力)
・視空間認知(視覚的なパターンや刺激の知覚・分析・検索・思考などの能力)
・流動性知能(新しい場面での適応に必要となる推測などの能力)
・短期記憶(情報を保持し、それを取り出す能力)
・認知的処理速度(単純な課題を正確に行う能力)
クイズのようないろいろな問題を解きながら測っていくというものだ。

すると、4つの指標に結果が現れる。
・言語理解(言葉の使用、理解、知識)
・知覚類推(見たものを推理、統合、判断)
・ワーキングメモリー(新しい情報の記憶、保持、処理)
・処理速度(複数の情報の正確な処理、速さ)

障害の有無にかかわらず、この4つのバランスは人によって異なる。しかし、特に行動に何かしら特異な子どもたちの場合は、このバランスが凸凹し過ぎて、うまくその処理ができていないために行動の問題になっていることがある。

例えば、落ち着きがなく、話を聞いていないタイプで忘れ物が多い子。何度言ってもいつも同じことを繰り返して怒られる、という子は教室で目立ってしまうため小学校3年生くらいで気になり始める。(先生や周りが)。実は小さい頃から彼自身は変化していないのだが、周りが落ち着き始める年齢なのだ。だいたい彼らは、ワーキングメモリーが極端に低く、そもそも「聞いたことを保持する」という能力が弱いことが多い。一方で、何かをひらめいたり、創造力に長けていたりすることも多く、知覚類推が高い場合もある。

そもそも、検査をして病院へ、ではなく、検査をしてより良い授業(良い指示・支援)へ、ということが目的である。それが、最近では「診断のため」となり、それは追求していくと、「学校のため」「就職のため」であることもあり、「本人理解のため」ではないことが増えてきている気がする。だから正直なところ、不必要に医師の診断を仰ぎ、薬物治療者が増えているのではないかと思う。

まずは、大人が自分自身の特性を知ることも必要だ。なんでもかんでも検査すればいいというものではないが、とにかく対人援助職にある方々は、自分でセルフチェックのつもりで検査してみることをお勧めしたい(検査器具を眺めるだけでもいい)。特に先生方については、そのことを知るだけで指導方法(指導への思い?とも言うべきか)が変わる。UDL(学びのユニバーサルデザイン)にも、この様々な特性に応じた指導や支援の必要性が重要だと思う。

※希望者については、K-ABCとWISC-Ⅳは検査と解析を実施いたします。(実費負担はいただきます。)
しかし、あくまでも「発達障害かどうか知りたい」ではなく、家庭や学校で、「本人の力をどう捉え、生かし、よりよく生きる支援をするか」を考えているというご家族や学校の担当者の方のみ承ることにしております。また、研修会も開催できますのでご相談ください。不必要な診断と薬に頼らない学びによる自己理解が可能になることを願って。

いろいろな本が出ています。参考までに。

「発達障害に薬はいらない」

「子どもの発達が気になるときに読む心理検査入門

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櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

宮城県石巻市出身。特別支援教育士。書道師範。東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。インクルーシブ教育の研究をしながら,ソーシャルスキルトレーニングの団体で発達障害のある子どもたちと出会う。2003年に石巻市で,任意団体「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職し,「生涯発達」の視点から教育,福祉を考えるコーディネートチーム「TANE」を主宰。ひとりひとりの違いを楽しんで生きる社会の実現を目指しています。

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