「生涯発達」とか、「生涯学習」という言葉にどんなイメージがあるだろうか。カルチャーセンターとか、なんとなく余暇的な学び場。そんなイメージもあるかもしれない。本当は、もっともっと深くて根本的なものだと思っている。
先日、書道塾に来てくれている青年のお母さんが、「いまだからこそ、必要な勉強っていうのがあると思うんです」とおっしゃった。それは、いままさに発達中の彼にとっては本当に大事な気づきだった。
高等部を卒業してから、ずっと同じ事業所に通っている彼は、その特性もあって淡々と仕事をこなす。コミュニケーションとしても簡単な会話については筆談などで対応できる。しかし、やはり本当にこの仕事をしたいと思っているのか、本当にこのままでいいのか、もっといろんなことにチャレンジするとか、いろんな楽しみを見つけるとか、そんな生き方があっていいんじゃないか、と母親自身が気づき始めたのだ。
福祉就労というのは実は「終身雇用制」に近くなっていることが多い。制度上は、「移行支援」、「継続支援」という名称の元に、スキルアップをしてできる限り、自立した生活に向けてステップアップするかのように見える。しかし実際には、複雑な人員配置、下がっていく給付金。また、地方だとそもそも選択肢が少ない。しかし、そうではない生き方のモデルがあってもいい。「福祉転職」とか、「福祉副業」というやつ。まだそんな概念はないが。
はじめのうちは、いつもの事業所と、違う事業所を交代で行く。思ったよりも混乱していなかった上に、なんとなく楽しそうだった。
彼にとって重要なのは今、「生活のための学び」だと母親が考え、じっくりとそれが実現できる場所を探し続けたいという。「せっかく働けるのに」みたいな考えもあるが、それは、一般社会に例えるならば、「もう少し自分の人生に幅をもたせたいのでちょっとここらで大学院でも行こうか」とか、「これまであくせく働いたけどちょっと違う業種もやってみたいな」とか、そういう感覚として捉えてみたらどうだろうか。それを自由に行き来できるということ、そういうことを実現することで、実は福祉業界の連携も強くなるような気がしてならない。
学びのペースは人による。特に、障害のある方にとってはゆっくりと発達する場合が多い。だから、16歳の学びが、26歳の今だからこそできるということもあるのだ。「せっかくこの仕事に慣れたから」というのは、実は、周りの評価であって、本人はもしかしたら飽きているかもしれない。できる限り本人の言葉を、本人の思いを、本人の可能性を生かしたい。そして何より、発達し続けるのが人間である。
そういう意識の変化もあり、「生涯学べる学習塾」を本格的に始めることになった。彼の場合は、「お金の学習」、「スケジュール管理」である。完全個別支援、必要な学びを取り出して行い、実践と「つなぐ」ためである。ここでできることだけを全てだと思わない、というのが基本。学校でできなくても、何歳になっても、遅くはない。
「何歳からはじめるべきか」
「もう遅いでしょうか」
「もっと前にやっておけばよかった」
いろんな声を聞きますが、まさに「思い立ったとき」「準備できたとき」でいいのだと思う。
ここでは、「学び方が分からなくて学べない」という子どもたちや成人の方を中心に支援を行う予定である。ここで理解できた方法を、学校や家庭や、取り巻く環境の人々にきちんと説明できるようにする、というコーディネートをしながら取り組む。
※「成績を上げたい」のようなニーズには対応しかねます。(結果的に学習が好きになり、成績が上がることはあると思いますが、それは目的とはしないという意味ですのであしからず)
4月は25日にも開催予定。
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