毎年、違うことをやっている。2016年に教員を辞めてからTANEという活動が本格的になる(いまでもなっているのか?)までなんだかんだやっているので、そのときは夢中だったが、この4年間でやったことだけを考えても、カフェの手伝い、デイサービスの立ち上げ手伝い、珈琲焙煎、発達支援の講座や研修の講師(民間から教育委員会から自前講座やら)、家族支援(ペアトレや家族カウンセリングや不登校相談や離婚相談まで?)、施設のコーディネーター(事業主へのカウンセリングやアドバイスや職員研修や活動プログラムの提案やら)、書道塾taneの活動(あらためて書道と発達のつながりを見出し魅力を感じる)、アドベンチャークラブ青年活動の本格化、つながりがつながりを呼んでくれて、いろんな場所に行くことができたなあと振り返る。ありがたい限り。あとは、とにかく時間ができたこともあり、ひたすら個人研究をしてきた印象。今年は保育の専門学校の講師というまた妙なチャレンジをしてしまったことで、日本の保育や発達の業界だけでなく、高等教育の課題に関心を寄せてしまう始末。落ち着きがない。

なんで振り返りたくなったかというと、専門学校の学生に「普段何やってるのか」「今まで何をしてきたのか」を問われたときに、理路整然と答えられなくなってきたから。「いろんなことしてる、いろんなことしてきた」って、答えたらちょっとひかれてしまったからブログを見せたり活動の写真見せたりしたら、そんでも分からなくて「なんかすごい!」と言われたりして調子に乗りそうなので自制している(謙虚さが大事です)。

分かっていたけれど、先生という仕事は向かない。
授業を作るのも考えるのも楽しいし、今は研究を進めているから個人がどんどん際立って見えてくると嬉しくなる。熱い話もするし、引き出して彼らが話し出すのを見るのはたまらなく喜びを感じる。一斉指導が嫌いなだけかもしれない。対話したい。何を考え、何を求めているのか、声を聞きたい。

そう思って、授業中の彼らの態度について共感し、表現してもらう。不満を持つことを抑えるのでは解決しない。それよりも、「なぜそういう行動をとるのか」を考え、問う。言いたいことや訴えたいことがあれば、否定せずに言い分を聞く。受け入れられるものや解決できるものだったら一緒に考える。

まわりくどいやつかもしれない。「聞き入れすぎている」と批判が来るのかもしれない。でも、保育の専門学校である。将来は子どもたちと関わる人たちなのだ。しかも多様な子どもたちと出会うのだ。優しくされる、話を聞いてもらうという体験なしに、子どもたちの行動の理由を問えるようになるのだろうか。自分とは異なるものを尊重し、その考えを聞き入れる保育者になれるだろうか。

聞いてもらえない、不満は同志で言い合って終わる、解決策さえ見出さない、その無気力は結局社会に帰っていくと思う。政治への無関心。それは、「大人に話を聞いてもらい、解決した」という経験がないからではないか。「自分が表現したら、世界が変化した」という経験がないからではないか。

河合隼雄の『過保護なくして親離れはない』という本がある。過保護は悪いこと、自立を阻む、といいがちだがそうではない。中途半端な自己責任論がますます自立を阻んでいる。私はとことん手をかけてもらった記憶と経験がある。それは必要だったからだ。年齢や常識で区切ることなく、必要な時に必要なだけ助けてもらった。だからいま、圧倒的に不安定になっても立っていられる。大事なのは、不安定にならないようにすることではない。「不安定になっても、大丈夫だと思えること」である。そのことをレジリエンスという。

学生の言い分を聞き、彼らが表現したことを認めていく。それ自体が安心感になり、学びは進んでいく。自分の発信が認められ、「表現が楽しい」「学ぶのは楽しい」に変わる。社会があるのではなく、作っていくのだという実感。それには「適応」ではなく「表現」が必要だ。合わせることより、はみだすことだ。表現できるようになるためには、「聞いてくれる第三者」が絶対に必要だ。そして若い時に、あらゆる価値観と出会って揺さぶられて欲しいと心から思った。

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櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

宮城県石巻市出身。特別支援教育士。書道師範。東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。インクルーシブ教育の研究をしながら,ソーシャルスキルトレーニングの団体で発達障害のある子どもたちと出会う。2003年に石巻市で,任意団体「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職し,「生涯発達」の視点から教育,福祉を考えるコーディネートチーム「TANE」を主宰。ひとりひとりの違いを楽しんで生きる社会の実現を目指しています。

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