通信制高校のカウンセリング、週1回なのでまだ認知度がない。一応予約制とはいえ、「カウンセリングに予約をする」というのはなかなか使い慣れている子でないと自主的には来ないし、まして私は今年から初めまして、という状態なのでのんびりふらふらしている。

今日も暇だな、くらいにかまえていたのだが、やはり「部屋を開けておく」というのはおもしろい。「あ、いた」という感じで雑談をしにくる子、私の姿を見てから「予約する!」と入ってくる子、「空いてますか?」と入ってくる子。常駐するという意味はそういうことなんだと思う。私自身が「予約」がとても苦手だからこそ、とてもよく分かるのだ。そこにいるから、話す。そこにいると思うから、なんとなく安心、とか。そんな程度の安心感でも「いる」と「いない」ではちょっと違うのかもしれない。「ああ、ここにこんなのがいるらしい」という認識があることで、「なんかあったら話してみるか」という保険のような存在。

私には「公認心理士」とか「臨床心理士」というような肩書きはない。一般的にはカウンセラーになるには「資格」が必要と言われるが、そもそも学んできた学問や経験などが、その場所の求める「カウンセリング業務」の目的と合致すればよい。そのため幅広いジャンルを必要に応じて学び、分野横断をしてきた私にとってはありがたいことでもある。

 不登校だったり、集団生活がうまくいかなかったりという過去のある生徒が多い。だからこそ「ここの生徒はみんなやさしい」というのだが、それはみんなが「傷つかないように傷つけないように」しているからでもあり、心理的安全性が高いわけではない。さらけだせない、信頼できない、いる、けれどいない、、、。学校だけがそれならばまだいい。が、家族関係にも同じように感じている子どもたちがいる。本当のことは言わない、親を傷つけないようにふるまう、言いたいことはがまんする、、、。ヤングケアラーが現在の中学生の約6%いるというデータが出ていた。おそらく父母の精神的な不安定さや理不尽な養育態度に振り回されているケース、精神的な母親役や父親役をしてしまっている子どもなどもデータでは上がっていないがかなり多いのではないかと思われる。

家族や周りの価値観や関係性はいかに、と本人の目の前でジェノグラムを書きながら一緒に考える。すると今までどうすればいいか分からなかったり、自分のせいだと思い込んでいたり、もうなすすべなし、、、と思っていた思いがするすると解けていく。解決したわけではないが、「あれ、自分が悪いとかそういう問題ではないようだな」と気づく。晴れやかな表情で、「なんかやってみます!」とその紙を握りしめて帰っていく若者たち。

「みんなちがうんだから、許し合って生きたいと思うんです」

大変で心も折れそうになってもそれでも希望を見つけようと必死だ。よくやってきた、よく生きてきた、そしてこれからもよく生きるために、ここで出会ったんだと思う。こんなにも美しい言葉たちを紡ぎ出せている彼らの口を塞ぐようなことは決してしてはならないと思う。

もう少し大人が「家族」について学ぶこと。それはもっともっと追求してみれば、「性教育」につながる。他者を尊重し、パートナーシップを築くとはどういうことか。最終的にそれはコミュニケーションである。その家族間(もっというならば夫婦間、あるいは親密な相手)コミュニケーション不全に陥っている家族の多さ。そしてなぜかそれは「仲が悪い」「相性が悪い」といいながらも世間的体裁と経済的な理由により保持されてしまう仕組み。

結婚すれば一人前、なんていつの時代の話なんだろう。結局相手を大事にできないままDVや夫婦間のモラルハラスメントの多さと見えにくさ。そもそも家庭の中での夫婦関係の支配的関係が、男女の関係のモデルだと思っている子どもも少なくないだろう。男の人が暴力を振るうのは、愛しているからだと思っていたという子に出会ったことがある。女の人が束縛するのは、自分を愛しているからだと言い切った子もいた。いずれにしても愛についてもっと話をしたい。

有名人による性的加害。これだってすべてはつながっている。権力と性が直結してしまいがちな構造。家族とは、支配される関係ではない。そしてもちろん学校や会社というものも疑似家族化される。日本のジェンダーギャップの高さは家族の在り方も影響していると思う。

もっと学びの機会そのものを増やしたい、と心から思った1日。
団士郎先生に学ぶ、家族理解ワークショップはほんとうに私にとって力になっている。東京に行きにくくなってしまった今、オンラインでも宮城で学びの場を作っていこうと思う。ぜひ関心のある方は「一緒に学びたい」と声を上げていただければ嬉しい。

性教育については、6月20日(日)つなぎめ講座ライト第2回にて取り上げます。ぜひ一緒に学びましょう。

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櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

「違いは魅力」をテーマに、子どもから大人まで特性を活かしてのびのびと発達するための、アセスメントとコーディネートを行う。
 東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,発達障害の子どもたちと出会い、宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。2003年に「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職。生涯発達支援の重要性に気づき「生涯発達支援塾TANE」を主宰。書道塾taneは「誰でも調子に乗れる書道」をモットーに石巻、仙台、各地で移動開催中。TANE相談室も定期開催中。