撮影は放課後等デイの子どもカメラマン。

世の中の雰囲気がどうなろうと、とにかく子どもの現場を支える人たちは必死で「楽しい」ことを考えている。そんな現場がニュースではなかなか語られないので、今回はそんな話をしていこうと思う。当然ながら問題や課題や批判(もちろんそれも大事なのだが)が溢れているようにも思う。3.11が近くなり、状況が非常に似ているからこそ強く反応してしまう我々でもある。

宮城県北部の支援学校は、希望者を学校で受け入れ、通常授業ではない形だが給食を食べていつもどおりの時間まで学校は開かれている。放課後等デイサービス(障害のある子どもたちが通う学童のような施設)が迎えに行くのはいつもどおり。バスルートは若干変わることもあり、やむなく自宅で過ごしたり、朝から放課後等デイサービスを利用する子もいる。小中高に関してはすべて休校なので、特別支援学級に通っている子どもたちは、朝から利用する子が多い。

実は、学校がそんなに受け入れてくれないのではないかと思っていたため、放課後デイがパニック状態?なんて思っていたのだがそれほどではなかった。やむなく家庭で過ごしている子や、学校に来ていない子のこと心配して、自宅で使って欲しいと教材を提供してきたり、給食も出るから積極的に来て欲しいと言う先生もいたようである。(この辺りは同じ県内でも温度差や地域差、人間差があるとは思う)

前置きが長くなったが、「先が読めない」という不安が、とにかく震災後からのテーマである。そうした現代を「VUCAの時代」と言うようである。
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
の、4つの単語の頭文字をとったものである。もともとは、アメリカの軍事領域での言葉だというが、最近では経済、企業、組織などいろいろな場面で使われるようになってきた。

教育現場でも、改訂した学習指導要領には「予測が困難な時代」とし、だからこそ、どういう力をどう育むのか、という基本方針が書いてある。(公教育が何を大事にしようとしているのかがよく分かる資料なので、この指導要領というものはすべての人が目を通した方がいいのではないかと思う。)

また、文科省では、「Society5.0に向けた人材育成」というものもある。この変化の激しい時代に乗れる人材を育てよう!と躍起になって、これまた計画通りに育てようとしちゃう逆説も起きる気がしてならないが(あくまで私の主観)、そもそも子どもは「育てる」のではなく、環境によって「育つ」のだから、そういう環境を整えることは大事である。
文科省ホームページはこちら

そんな、予測不可能な時代を乗り切れる力は、云々、、、。と書いてはあるものの、ふと思ったのは、つまり今、まさに今、それを求められているわけだなと。そんな中で、「今日はどんな楽しいことをしようか!」と日々現場では、子どもたちと一緒に考えて実践(むしろ実験)している状況なわけである。

今までプログラムとは何か、子どもの支援に必要な支援力とは何か、子どもたちの自立って何か、と真剣に考えて来たチームはとにかく強い、と感じた。とにかく企画から実行のスピード感、困ったことが起きた時の解決の模索、すべてが早い。なぜ早いのか。それは、それぞれが「自分ごと」として子どもたちの困り感を捉えているからである。

「事件は会議室で起きてるんじゃない!」というセリフは古いが、その通りだ。

・まず動く
・失敗する
・計画通りに行くはずがないことを知る
・問題が問題なのではないと知る
・解決策の問題だと知る
・正解はないことを知る
・自分はどうするか考える
・一人で悩まない
・自分の無力を知る
・弱みを晒す覚悟をする
・はい、次!という思考

このあたり、子どもや障害のある方々と仕事をしている人にとっては、とても重要なのではないかと思う。自分の思うように相手が考えないことの方が多い。そもそも対象としている存在は人間だから、いろいろな状況で変動し(V)、不確実で(U)、複雑で(C)、曖昧な(A)ものである。さまざまなアセスメントで相手の特性理解をしたとしても、関わる側の自分自身の特性さえも理解できていないのが人間なのだ。医学モデルでも、脳科学だけでも解決できないのは、何よりもわたしたちがそういう「人間」だからである。

わたしたちは、自分たちに過信してはいけない。だからこそ、意外な発見、意外な喜び、意外な楽しさ、思いもかけない驚きほど豊かな感覚はない。すべて予定調和ではない世界をどう楽しめるか。子どもたちや、障害があると言われる方々と一緒にいるだけで、その力を育んでもらえるのではないかと思う。

今の時代は、大人が子どもたちから学ぶ時代。先が読めなくてもどう楽しむか、今をどうするか、それはもしかしたら彼らの方が知っている。子どもはいつだって最先端なのだと思う。そしてまた、特性の豊かな人たちの生き方もまた、然りである。

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櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

宮城県石巻市出身。特別支援教育士。書道師範。東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。インクルーシブ教育の研究をしながら,ソーシャルスキルトレーニングの団体で発達障害のある子どもたちと出会う。2003年に石巻市で,任意団体「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職し,「生涯発達」の視点から教育,福祉を考えるコーディネートチーム「TANE」を主宰。ひとりひとりの違いを楽しんで生きる社会の実現を目指しています。

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