登米町にあるNPO法人奏海の杜で、今年度、障害のある18歳以上の方のライフスキル講座のコーディネートを担当している。とはいえ、ここの理念として「障害のある人もない人も地域を奏でる人になる」があることもあり、「参加者」という対象を「障害のある人」という形で限定しているわけではない。

そもそも「共生社会」というもののあり方をじっくり考えていけばいくほど、どこで分ければいいのか(いや、むしろ分ける意味はなんなのか)などに突き当たる。日本における特別支援教育は「日本型インクルーシブ」と、あえて「日本型」をつけることがあるのだが、つまり「場を分けることで学びの質を平等にする」というメリットがある、と、公的には解釈されているのかもしれないが、腑に落ちてはいない。

あえて「障害者のための」という文言は、むしろ差別的だが、一方で、今まで権利を受け取ってこなかった、あるいはクローズアップされることで分かりやすくなるのであれば、使ったほうがいいときもある。つまりは、その「分ける」意味が、誰にとってメリットがあるのか、ということで考えるほうがいいのだな、と最近では思う。

ただ、世の中というのは言葉に敏感であるがゆえに、たとえば私の書道塾taneの説明も、「障害のある人が多く参加している」ということだけで「障害のある人のための書道塾」という説明をされることが新聞や取材などでは多い。しかし、何度も言うようだが、その説明には限界があり、好きではない。だからこそ「だれでも参加できる」というようにしているのだが。

「障害者アート」という言葉も、そもそもは必要のない言葉だと思うのだが、この言葉を使うことで、障害のある人の価値を変化させるために「あえて」使っているという哲学があれば、いずれうまく消えてくれるに違いない。そう考えていくと、パラリンピックがオリンピックと分けられている理由や、存在意義なども変わっていくのかもしれない。できればこういう言葉に敏感な人が各業界にいてほしい。

ということで、今回の講座では「ストレスってなんだ?」というテーマで一般参加者9名、奏海の杜スタッフ4名、利用者と実習生4名という構成。なんとなく社会の構成みたいでおもしろいなと思ってのスタート。

知的障害があるから内容を変えるのではなく、物事の本質を「分かりやすく」すればいいだけなのだ。難しい言葉にふりがなを振る、ではなくて、難しい言葉を言い換える、ということの方がいい。内容を簡単にする、ではないのでここがかなり重要、と思っている。

考えやすくなるコツは、「たとえ」と「実体験」である。身体や手を動かすことで具体的に考えることができるようになる。そこから抽象的な「概念」を作っていくことは難しいこともあるから、手助けが必要になる。だからこそ、「一緒に学ぶ」ということの意味は尊い。教えるではなく、気づいていく、というようなもの。

今回のテーマの「ストレス」について、「風船」と「コップ」で考えてみた。とても素敵なグループディスカッションだったのでちょっとだけ記録を掲載してみる。具体的に考えることで、ストレスコーピングを自然に導いていることが分かる。

「障害のある人を理解するための研修」的なものを、支援者向けや学校向けに行うこともあるが、正直なところ机上で学ぶことは限界がある。目の前で何が困っているのかを知り、自分がその時に何ができるのかを知る、その方が大事なのだと思う。さらに、彼らの様子を見て自分が何を感じるのか、ということそのものが自分の価値観であり、そこを思い知るということも重要だ。だいたいの人が、「何かしてあげなきゃ病」に取り憑かれている。本人たちと講座に出た方はなんとなく分かったかもしれないが、思考の枠組みを外せず、求められている正解を探そうとし、緊張しているのは「健常者」と言われる人たちの方かもしれない。その枠を外し、「一緒に考える」「無理に答えさせようとしない」「自分たちの気づきを伝え合う」「どんな答えでも受け止める」という安心感が、実は次の「学びたい」に影響している。

今回は、実習生のひとりがとても静かに畳席で折り紙をおり、「一緒にいる」という参加をしていた。「無理なことはしなくていい」という今回のルールに忠実な参加の仕方である。学校やその他の場面で、わたしたちはそういう参加についてどういう価値観をもっているだろうか。そのことを、わたしたちはいつも彼らから学んでいる。誰にとっての学びの場なのか、「生涯学習」である以上、それは本当に自由なのかもしれない。

とても贅沢な学びのじかんであることは、間違いない。ただし、それを「どう受け止めるか」「どう解釈するのか」が、受け手の問題だ、ということかもしれない。

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櫻井育子(さくらいいくこ)
生涯発達支援塾TANE 代表(コーディネーター)

宮城県石巻市出身。特別支援教育士。書道師範。東北福祉大学福祉心理学科を卒業後,宮城教育大学の大学院で障害児教育を学ぶ。インクルーシブ教育の研究をしながら,ソーシャルスキルトレーニングの団体で発達障害のある子どもたちと出会う。2003年に石巻市で,任意団体「NPO石巻広域SSTの会アドベンチャークラブ」を立ち上げる。小学校,特別支援学校の教諭経験後,2016年に退職し,「生涯発達」の視点から教育,福祉を考えるコーディネートチーム「TANE」を主宰。ひとりひとりの違いを楽しんで生きる社会の実現を目指しています。